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まちの魅力を倍増させる冬季スポーツの可能性

※本ブログは2018年12月20日(木)に名寄市立大学で開催された、「フィンランドから学ぶ冬のスポーツ文化と子どもたちの育成」(なよろスポーツ合宿推進協議会主催)でのトークセッションの様子です。

<イベント情報>
フィンランドから学ぶ、冬のスポーツ文化と子どもたちの育成
(ヴォカティ・オリンピックトレーニングセンター等調査研究事業報告会)
日時:2018年12月20日(木)18:30~20:00
場所:名寄市立大学
主催:なよろスポーツ合宿推進協議会主催

<トークセッション登壇者>
加藤剛士:名寄市市長
阿部雅司:Nスポーツコミッションアドバイザー。リレハンメル冬季オリンピックジャンプ複合金メダリスト
大沼広明:NPO法人なよろ観光まちづくり協会
遠藤貴広:名寄青年会議所
ファシリテーター/黒井理恵:なにいろ工房

名寄と似ている?!フィンランドのヴォカティ

黒井:みなさんはフィンランドのヴォカティ・オリンピックトレーニングセンターへ視察をいってらっしゃいましたよね。今回は視察の中で感じたことや、今後の名寄の冬季スポーツの拠点化に向けて活かせそうなことをいろいろとお話しをうかがいます。まずは、今回の視察で「へぇ~」と思ったことはありますか?

遠藤:日の短さに驚きました。朝は10時くらいから明るくなって、3時には真っ暗。夏はその逆なんでしょうけど・・・。

大沼:街の雰囲気は名寄と似ていましたね。

加藤:そうですね、それは私も感じました。ヴォカティはこのオリンピックトレーニングセンターを中心に年間100万人が訪れると聞きましたが、人口は1万人で名寄よりも小さいんです。小さなまちがこういった活動をしているという点でとても学びがありました。

一つ、「へぇ」と思ったことで挙げると、タクシーについてです。タクシーを呼んだらなかなか来なくて、20分かかったんです。聞くと、タクシーがスクールバスを兼ねているそうで、ちょうど子どもの下校時間と重なって遅くなったということでした。日本ではなかなか難しいことです。フィンランド人の頭の良さもありますが、こうして資源を効率的に活用しないと立ち行かないという人口の少なさもあるんでしょうね。

阿部:今回、私も視察に同行させてもらいましたが、私がフィンランドに初めて行ったのは19歳のときです。それから34年、毎年訪れています。報告会の中で北川さんも言ってましたけど、最初は「できたことを教える」という指導方法に驚きました。ジャンプでものすごい失敗した時にも、コーチはできたことや良い点を探して「いまのジャンプ、ここがよかったね」と伝えてくれる。それがとてもうれしくて、次はもっといいところを伸ばそう、となるんです。日本ではダメなところを指摘して修正するというコーチングが主流だったので、本当に驚きました。

黒井:改めて、ヴォカティ・オリンピックセンターに行ってみての感想を教えてください。

加藤:率直な感想は・・・実はそんなに大きな驚きはなかったんです。施設もたくさんあってすごいんです。すごいんですけど、きらびやかな最新施設がドーンと建っているわけではなく、年を重ねるごとに施設が増えていって、複合的に充実したスペースになったんだろうなという印象でした。それは名寄にも通ずるところがあります。健康の森も夏はサッカーと陸上、冬はクロカンコースに変わり、カーリングホールがある。逆にヴォカティにはピヤシリのような大きなスキー場はないくらいです。そんな視点で見ていると、名寄もヴォカティのようなスポーツ拠点になれる可能性があるなと思いました。

黒井:阿部さんが初めて訪れた34年前はどんな感じだったんですか?

阿部:最初は、本当になんにもなかったんですよ。真ん中に小さな小屋と受付、コテージがあってそこで選手が寝泊りします。当時はトレーニングセンターとして有名ではありませんでした。知名度が上がったのは20年ほど前にスキートンネルができてからです。それをきっかけに世界中から選手が集まるようになり、施設が一つ、二つと増えていって・・・という感じです。その30年の変遷を見ているから、名寄もヴォカティのようになる可能性があると思っているんですよね。

クロカンが生活に溶け込み、健康増進とつなげている国

黒井:フィンランドのスポーツ文化はいかがですか?

阿部:フィンランドはクロスカントリースキーやノルディックウォーキングが生活の一部になってます。夏はノルディックウォーキングで街を歩く人もたくさんいますし、スーパーの前にポール(ストック)を置いて買い物をするくらい日常的です。冬はクロスカントリースキーで隣の街までいけるように整備されていたりもします。

黒井:阿部さんは名寄の街中でノルディックウォーキングの講習会をやってましたし、名寄でも少しずつ見かけるようになってきましたよね。名寄青年会議所(以下JC)は、夏に「なよろがっちりRUNデー」を開催してスポーツ文化を根付かせようとしてましたよね。

遠藤:ヴォカティで驚いたのは、70~80歳くらいの女性3人組がスキートンネルに来てスキーをしていたことです。小さなころからスキーに親しんでいるのもあるでしょうし、クロカンをしに遊びにいくというのが普通なんですね。いろいろと調べると、フィンランドもかつて国民の健康問題があって、それを国を挙げて解消していこう動きがあったそうです。その結果、国民が健康になり、医療費が抑えられるようになった。僕たちも青年経済人の集まりですし、どうしてもスポーツ振興を「地域経済が潤う」という視点で話しがちですけど、市民が生涯健康でいられることは、お金に変えられない価値だと思います。そんな意味でも健康というキーワードに注目しています。

黒井:私も2年前にヴォカティに視察に行きましたが、やっぱり70代くらいの老夫婦が来てるんですよ。何しに来てるのかなと思って話しかけたら「もちろん、クロスカントリースキーをしに来てるんだよ」と言うんですね。いまはスキーホリデー※だから、と。森の中で身体を動かして、おいしいものを食べて、サウナに入ってを繰り返すと、楽しいし身体が整うんだと話してました。健康施策を行って医療費を削減するという流れはいろいろな自治体で実績が出てきていますよね。

※スキーホリデー:フィンランドでは冬季期間に約1週間、スキーをするための休暇を取るという文化がある。

加藤:そうですね。冬季スポーツの拠点化は「拠点化すること」だけが目的ではありません。経済活性もありますが、それ以上に市民の健康や青少年育成という視点もあります。また、冬や雪の生活は苦労もありますが、私たち名寄市民は避けて通れません。一方でこの冬をどう過ごすかという点に名寄のアイデンティティがありますし、長い冬をワクワク・楽しく過ごせないと地域愛も育まれないんです。地域愛がないと人は根付きませんし、当然、持続可能な地域経営も望めません。冬季スポーツを象徴的にピックアップしていますが、もっと広い視野で名寄の街のことを見据えて、この事業を進めていく必要があると思っています。

自分で考え、実行する自律型の教育が学校でもスポーツでも

黒井:大沼さんは中学生のお子さんがいらっしゃいますよね。今回の視察でユバスキュラ大学、ソトカモ高校と地元の学校を訪れたと聞いていますが、いかがでしたか?

大沼:フィンランドの子どもの学力は世界一と言われていますよね。学費は大学院まで無料ですし、教育の仕組が日本とまったく違います。驚いたのは授業時間が短く、学力テストもないということ。それでどうやって世界一の学力が身に着くのかと聞くと、子どもたちが自ら率先して、自分の学びたいことを、自由時間の中で学ぶそうなんです。子どもたちの自主性が重んじられていますし、子どもたちも自律していますよね。

黒井:何か一つの答えを求めていく教育ではなく、自分で考えて学ぶという教育がフィンランドでは当たり前ですよね。阿部さん、スポーツコーチングの視点からも違いを感じますか?

阿部:「これをやりなさい」ではなく、まずは自由にやらせてみて、そこで気づいたことを指導する、自分で考えて行動させる指導が多いです。型にはまったことを教える感じではないですね。僕も指導者として20年近くやってきていますけど、言われたことしかやらない選手は伸びないんです。自分で考えて実行できる選手でないと、伸びしろはありません。

黒井:日本でも文科省が自律型人材の育成というキーワードを持っています。いろんな教育者が模索していますが、学校のカリキュラムや仕組みだけではやりきれないことも多いようです。もしかしたら、少年団などでフィンランドのようなコーチングができれば、「自律型人材の育成」がスポーツを通じてできるようになるかもしれないですよね。

阿部:たしかにそうですね。スポーツを通じてやったほうが早いかもしれないですね。そこで育った子どもたちが必ずしも世界で活躍するアスリートになるわけではありません。でも、そういった指導はスポーツの世界だけでなく、社会で絶対に活きていきます。スポーツ指導は、メダルを取ることだけが目的ではありません。人材育成という意味でも、大きな効果があると思います。

冬季スポーツの応援に欠かせないものは・・・お酒?!

遠藤:JCもジュニア育成という観点で事業を進めていますが、名寄の大会を見ていると、市民側の応援や盛り上がりに少し欠けているなと感じているんです。留萌は音楽合宿の街としてまちづくりを推進してきて、全国から集まってくる吹奏楽部のおもてなしを市民が担っているんですね。体育館に寝泊りする子どもたちに地域の方々が夕食を提供していて「じゃあ、明日あなたの演奏を聴きにいくね」といった交流が生まれています。必然的に演奏会に聴きに来てくれる市民が増えるんです。名寄の大会に行けばたくさんの人が応援に来てくれて、そこで優勝したらヒーローになれる、というような雰囲気、盛り上がりを創っていきたいと思っています。

黒井:フィンランドの冬季スポーツの応援文化はすごいですよね。

阿部:フィンランドに限らずヨーロッパ全般なんですが、冬季スポーツは熱狂的に盛り上がるんです。ノルウェーのホルメンコーレンスキー大会は1週間くらい開催されるんですけど、お祭り騒ぎです。1週間分の食料とお酒を買い込んで山にこもって、キャンプしながら応援するんです。山の奥に入っていく5キロのコースもびっちりと人とテントが並び、途切れることなく応援があります。なんでかなと思うんですけど、カギは意外にも「お酒」のようです。海外ではウイスキーやホットワインを飲んで身体を温めて、陽気に応援します。日本は競技会場でお酒を飲むのはタブーという感じがあるんですけど、海外ではお酒が出てくるのが当たり前。

黒井:お酒、出しますか!(笑)

遠藤:健康の森は市内とつなぐバスが無料ですし、環境は整っていますよね。休日に大会の応援に行って、そこでウイスキー飲んで、帰ってくる。平日でも仕事が終わったらバスでスキー場にいって滑って、軽く飲んで、20時台の最終便で帰ってくる。そういうライフスタイルを浸透させたいですよね。

名寄の魅力を倍増させるために必要なこと

黒井:今日のテーマは「名寄の魅力を倍増させる冬季スポーツの拠点化について」なんですが、フィンランドの視察を受けて、名寄の魅力を倍増させるためにどんなもの・ことが必要だと思われますか?

阿部:スキートンネルですね!

黒井:なるほど!それはやっぱり長年ヴォカティを見ていて、っていうことですね。

阿部:そうです。ヴォカティはスキートンネルができて、それをきっかけに人が来るようになり、コツコツと長い年月をかけながら施設を増やしていき、今のようになりました。

加藤:最近、よく「名寄、スキートンネルやるんですか?」と聞かれてるんですよ(笑)。スキートンネルに限らず、冬季スポーツの施設に関わるところは、民間企業やいろんな団体とうまく連携して、可能性を追求していきたいと思っています。ヴォカティは10・10・10(テン・テン・テン)というのがあって、10月10日の10時に前シーズンから蓄積してきた雪をコースに敷設して、クロカンコースをオープンするんです。名寄も雪が多いですし、なんとかできるんじゃないかなと思いました。10~11月というのは、この地域の宿泊業界は閑散期です。この時期に一足早くスキー合宿を受け入れられれば、また、3-4月も雪を残してスキーのアフタートレーニングができるようになればいいですよね。

阿部:あと、ヴォカティでは障がい者も一緒にスキーをするんです。大人、高齢者、子ども、障がい者、そこに選手たちがいて、みんなが分け隔てなく同じコースでスキーをする。スキートンネルでゆっくり滑ってたら、シットスキーの人に抜かれたりしてね。どうして障がい者がヴォカティに集まるかというと、コンパクトに整っているんで、一人で会場やホテルを行き来できてトレーニングがしやすいそうです。

黒井:ヴォカティでは冬季パラスポーツのワールドカップもやってますよね。名寄も社会福祉協議会がパラスポーツを推進していますし、名寄大学で社会福祉を学んでいる学生さんもいますから、その環境もつくれそうですね。また、大学と病院のスポーツを通じた連携がさらに進めば、名寄ならではのスポーツ施策ができるんじゃないかと思っています。ユバスキュラ大学では「スノーポリス」という産官学連携組織があるんですが、そこに参画している民間企業は事業開発、商品開発をやっています。そんな動きも生まれていくといいですよね。

大沼:名寄はすでにいろんな施設や組織があります。それらが連携して、大学や健康の森がある名寄市の北側が充実していくといいですね。あと、数年前にローラースキーを市街地でやりましたけど、あんな風に生活圏の中で冬季スポーツに触れられる動きを創っていきたいですね。

遠藤:名寄は利雪親雪条例もありますし、市民が雪像をつくる「おらの雪像見てくれコンテスト」もあったりと、雪を楽しむという感覚は市民の中に根付いていると思います。ここで改めて、健康というキーワードも入れて市民が冬を楽しめる仕掛けを作っていきたいと思っています。

加藤:名寄は様々な冬季スポーツイベントや大会が開催されていますが、まだまだ見に来てくれる人が少ないんです。「大会を見に行く」以外の目的も創っていく必要がありそうですね。お酒が飲めるとか、子どもたちが遊べるとか、スポーツイベントにいろいろなにぎわいが出てくるといいですね。冬のイベントでしっかり経済が循環するということを市民にアピールして、いろんな投資が入ってくる仕組みを作っていきたいです。また、青少年育成という視点でいくと、風連地区のスポーツクラブがさまざまな素晴らしい取り組みをしています。子どもたちが多様なスポーツの経験ができるようにし、そこに地域のみなさんの協力が入ってくると、地域愛を育むことにつながっていくと思います。こんな取り組みも、名寄地区にも広げていきたいですね。

黒井:みなさん、ありがとうございました。

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